📘1冊目:『グロテスク』/桐野夏生


 この物語を読み終えたとき、胸の奥にひっかかったものが消えなかった。女たちの「生きづらさ」と「美の序列」に静かに圧倒された1冊。


【本のタイトル・出版社】

『グロテスク』(文春文庫)


【作者】

桐野夏生


【あらすじ】

 名門女子高を卒業した女性たちが、風俗業に身を置き、やがて殺害されるという事件が起こる。事件の背景を語るのは、その同級生であり「美しさを持たなかった女」──彼女の視点で語られる“醜さ”と“社会の階層”が絡み合う物語。


【見どころ】

 学校・職場・家庭で繰り返される“女同士の序列、表と裏の顔、押し殺した欲望。それらが濃密な文体で描かれ、「美しくないこと」がどれほど現代社会で排除につながるのかを突きつけてくる。まさにグロテスクな1冊。


【感想】

 女の世界にある“見えない暴力”に、自分の記憶がひそかに反応していた気がする。“美”が無条件に価値として扱われるこの社会で、それを持たない人間の孤独をここまで描いた作品は他にない。加害者と被害者の境界も曖昧で、読むたびに自分の価値観が問われる。


【まとめ】

 不快だけれども、目が離せない。人間の“内側”をえぐるような物語で、読後もずっと思考が止まらなかった。


【オススメ】

  • 女同士の関係性に苦しんだ経験がある人
  • 社会の“見えない格差”に違和感を抱いている人
  • 明るくはないけど、深く刺さる物語を探している人

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です