この物語を読み終えたとき、胸の奥にひっかかったものが消えなかった。女たちの「生きづらさ」と「美の序列」に静かに圧倒された1冊。
【本のタイトル・出版社】
『グロテスク』(文春文庫)
【作者】
桐野夏生
【あらすじ】
名門女子高を卒業した女性たちが、風俗業に身を置き、やがて殺害されるという事件が起こる。事件の背景を語るのは、その同級生であり「美しさを持たなかった女」──彼女の視点で語られる“醜さ”と“社会の階層”が絡み合う物語。
【見どころ】
学校・職場・家庭で繰り返される“女同士の序列、表と裏の顔、押し殺した欲望。それらが濃密な文体で描かれ、「美しくないこと」がどれほど現代社会で排除につながるのかを突きつけてくる。まさにグロテスクな1冊。
【感想】
女の世界にある“見えない暴力”に、自分の記憶がひそかに反応していた気がする。“美”が無条件に価値として扱われるこの社会で、それを持たない人間の孤独をここまで描いた作品は他にない。加害者と被害者の境界も曖昧で、読むたびに自分の価値観が問われる。
【まとめ】
不快だけれども、目が離せない。人間の“内側”をえぐるような物語で、読後もずっと思考が止まらなかった。
【オススメ】
- 女同士の関係性に苦しんだ経験がある人
- 社会の“見えない格差”に違和感を抱いている人
- 明るくはないけど、深く刺さる物語を探している人
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